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アフターワーク透析について

仕事と治療の両立を支えるアフターワーク透析

働き盛りの方にとって「仕事と透析治療の両立」は大きな課題ではないでしょうか。日中はできるだけ仕事のために時間を費やしたいという場合、透析を受ける時間を変更するのも一つの手です。みはま病院では、患者さんの社会復帰を支援するために2020年1月20日よりアフターワーク透析を始めました。


■人工透析とは

人工透析とは、腎臓の働きの一部を人工的に補う治療法です。腎臓には、血液をろ過して、血液中の老廃物や余分な水分を尿として排出する働きがあります。

しかし、病気などの影響で腎臓の働きが著しく低下すると、体内に老廃物や水分がたまって、尿毒症(頭痛、食欲不振、嘔吐、不眠など)の症状や、高血圧、むくみ、心不全といった症状が出現し、命に関わる危険性もあります。

こうした状態を防ぐ方法の一つが、人工透析です。病気などの影響で正常に機能しなくなった腎臓の代わりに、血液中の老廃物や余分な水分を取り除きます。

●人工透析の種類

人工透析には「血液透析(HD)」と「腹膜透析(PD)」の2つの方法があり、それぞれにメリット・デメリットがあります。

血液透析は、腕の血管に針を刺し、ポンプを使って体内の血液をいったん外に出して、ダイアライザー(血液透析器)を通過させることにより、体内の不要な老廃物や水分を取り除く方法です。ダイアライザーで浄化された血液は、再び体内に戻されます。血液透析は設備のある医療機関でしか行えないため、定期的に通院しなければなりません。わが国の透析患者のうち、9割以上が血液透析を受けています。

腹膜透析は、お腹の中にある腹膜(胃や肝臓などの内臓の表面を覆っている薄い膜)を活用する透析法です。お腹の中に透析液を入れると、腹膜を介して不要な老廃物や余分な水分が透析液に移行します。その透析液を体外に排出することで血液が浄化されます。血液透析に比べてからだへの負担が少なく、通院回数が少なくて済むのがメリットです。しかし、腹膜透析を続けることは難しく、一般的に治療を行える期間は5〜8年程度といわれています。

●透析にかかる時間は?

血液透析の場合、1回4時間、週3回程度の通院治療が一般的です。透析時間が長いほど合併症のリスクが低くなるという報告があり、1日6時間以上の長時間透析を受ける方もいらっしゃいます。

一方、腹膜透析には、寝ている間に装置を使って自動的に行うAPDと、日中に3、4回の透析液バッグの交換を患者さん自身が行うCAPDの2つの方法があります。バッグ交換にかかる時間は20〜30分程度です。

■透析しながらでも仕事は可能?

透析治療を導入してからも働くことは可能です。実際に、仕事と透析治療を両立されている方はたくさんいらっしゃいます。社会生活を維持し、満足感や充実感を得るためにも働くことは大切です。ただし、透析治療を受けながら仕事をすることは容易ではありません。主治医の指導を仰ぎながら、無理せず自分のペースで続けましょう。

■仕事と透析を両立する上での問題点

仕事と透析治療を両立するにあたって、いくつかの問題点が生じます。以下で詳しくみていきましょう。

●時間的な制約がある

透析患者の9割以上が受けている血液透析の場合、週に3回半日をベッドの上で過ごすことになります。腹膜透析であっても、こうした時間的な制約により、週5日フルタイム勤務や出張の多い仕事であれば、続けるのが困難なケースもあるでしょう。

●見た目にわかりにくい

腎臓病は見た目ではわからないことも多く、一見健康そうにみられるため、周りからの理解を得られないことも少なくありません。同僚が忙しくしていると「自分だけが休むのは申し訳ない」と感じてしまい、つい無理をしてしまいがちです。

●体力が低下して疲れやすい

透析患者さんは、疲れやすく、持久力や筋力が低下していることが多々あります。そのため、長時間の労働や肉体労働を続けていると、体調を悪化させてしまいかねません。また、透析患者さんは一般的な方に比べて免疫力が低下しています。さまざまな感染症を引き起こす可能性があるため、十分な注意が必要です。

■透析を受けながら仕事をするポイント

透析治療を受けている方が仕事をする際に、いくつかの課題があるのは確かです。だからといって、やりたいことをあきらめる必要はありません。しかるべき対策を講じれば、今までとほぼ変わらず仕事をすることも可能です。ここでは、透析を受けながら仕事をする上で大事なポイントをご紹介します。

●日中の就業時間を確保する

一般的なクリニックの場合、透析できる時間帯は日中に限られています。会社勤めの方は人工透析を受けるために早退せざるを得ないため、どうしても仕事へ支障をきたしてしまいます。そこで最近では、仕事をお持ちの透析患者さんに考慮して、夜間の睡眠時間を利用するオーバーナイト透析(8時間以上、週24時間以上)を行う施設も増えてきました。

オーバーナイト透析に対応している施設はまだ限られていますが、かかりつけ医の医師に相談して紹介してもらったり、転院したりするなどの方法があります。日中の時間を有効利用したい方は検討してみてはいかがでしょうか。

●周囲の理解を得る

働きやすい環境を整えるには、周囲の理解を得ることが不可欠です。上司の許可を得ていたとしても、早退や欠勤が重なれば同僚の反感を買いかねません。勤務先の同僚には、人工透析を受けていることを話して、病気に対する理解を深めてもらいましょう。一緒に働く人たちとよく話し合い、お互いに配慮しあえる関係を築くことが大切です。

●規則正しい生活を送る

仕事と透析治療を両立するためには、規則正しい生活を送ることが大切です。特に食事の管理は重要で、医療従事者や管理栄養士の指導のもと、決められたカロリーやメニューをきちんと守らなければなりません。食事制限のポイントは、水分や塩分、カリウムを制限し、必要な栄養素をバランスよくとることです。

また、透析患者さんは筋力が低下しやすいため、運動で筋力をつけることも大事なポイントです。無理のない範囲で、できるだけからだを動かすことを心がけましょう。規則正しい食生活や適度な運動はストレスを発散するのにも役立ちます。長時間拘束される透析治療ではどうしてもストレスがたまりやすいもの。趣味や娯楽でリフレッシュを図りましょう。

■仕事帰りに通院できるアフターワーク透析

みはま病院では、これまで患者さんの社会復帰を支援するために夜間透析(18:00透析開始)と、オーバーナイト透析(22:30~翌朝7:00)を実施してきました。しかし、患者さんによっては「就業時間が18時以降なので、業務を早めに切り上げなければならない」などの声をいただいていました。こうした問題を解決するために、アフターワーク透析を始めることになりました。

●アフターワーク透析とは

月水金の19:00~20:00に開始する血液透析です。4時間の透析を行います。従来の夜間透析よりも1時間遅くスタートするので、お勤め帰りの方でも安心して透析治療を受けていただけます。19時に始めれば23時には終わるので、オーバーナイト透析のように宿泊する必要はありません。仕事に支障をきたすことなく、プライベートな時間を確保することが可能です。

●アフターワーク透析の適応と条件

アフターワーク透析を受けていただくには、以下の条件を満たす必要があります。

・社会復帰している方(就業証明の提出必要)
・合併症がない、もしくは軽度である方
・ブラッドアクセスが良好な方
・極度のアレルギーや薬剤等の禁忌がない方
・自身で通院(自家用車、または家族に送迎など)が可能な方
・来院時刻を遵守できる方
・以上の条件でご本人と家族が希望されること

●設備と注意点

・第3透析室で行います。ベッドのみの対応となります。
・透析中の食事は原則禁止です。透析前に済ませていただきます。
・21時以降にオーバーナイト透析患者さんが来院し透析を開始します。
・心電図、レントゲン等の検査時は早めに来院していただく必要があります。
・臨時薬は翌日以降のお渡しになる場合があります。

●適応の中止

次のような場合、アフターワーク透析の対象外となりますのでご了承ください。

・適応条件より一項目でも外れた場合
・重度のイビキ、透析中の動作などで他者に迷惑と判断された場合
・継続中であってもケガや、合併症の出現または突発的な発熱などにより、医師が治療不可と判断した場合には通常透析(短期的も含む)に戻っていただきます。

■透析中のおすすめの過ごし方は?

透析治療中は、シャントのある腕は透析機器とつないだチューブが刺さっているため、ベッドから離れることはできませんが、ベッドの上での過ごし方は自由です。透析中の患者さんは、テレビを見る、本を読む、DVDプレイヤーで好きな映画を見る、音楽を聴く、インターネットやゲームを楽しむなど、思い思いの時間を過ごしています。もちろんお仕事をしていただいても構いません。

みはま病院では、ベッドに個別のテレビを備えています。また、Wi-Fi環境も整備されており、お手持ちのスマートフォンやパソコン、タブレット端末などを使ってインターネットに接続することができます。ただし、携帯電話の通話はご遠慮いただいていますのでご注意ください。ほかの患者さんもいらっしゃる場ですので、お互いに少しでも気持ちよく過ごせるといいですね。当院でも、皆様に快適に過ごしていただけるようできるだけ配慮しています。

■まとめ

腎機能が著しく低下すると、自分の力では体内にたまった老廃物や過剰な水分を排出できなくなり、透析治療で血液を浄化することが必要になります。しかし、働き盛りの方にとって仕事と透析の両立は容易ではありません。みはま病院では、透析患者さんの仕事への影響を軽減するために、19時から20時の間にアフターワーク透析を開始しました。透析治療を始めても社会復帰は十分に可能です。

監修 内野 順司

医療法人社団 誠仁会 CE部上席部長
公益社団法人 日本臨床工学技士会 副理事長
一般社団法人 千葉県臨床工学技士会 監事